この記事はこんな方におすすめです:好奇心旺盛な子供、理科好きな少年・少女・大人、アーティスト、デジタルで満足できない人、料理や物作りがすきな女性にも向いてるかもしれません
サイアノタイプとは鉄塩(鉄の化合物)の感光性を利用した写真プリント(技法)です。 鉄塩を塗った印画紙の感光性(感度)はすごく弱いのでネガと印画紙を密着させて太陽光や紫外線露光機で長時間露光させます。 ここまでの説明で薄々気が付いている方もおられると思います。 そう、そのとおり、要するに日光写真です。
日光写真と言えば、雑誌の付録についてきたものや、駄菓子屋で買った種紙で、子供が遊ぶイメージがありますが、あなどってはいけません。 繊細でしっかりと諧調も出るのでちゃんとした写真ができあがります。 国内外には表現方法としてサイアノタイプの技法を使っているアーティストもいます。 つまり子供からアーティストまで楽しめる表現方法なのです。 最大の特徴は写真が白地に黒ではなくプルシアンブルーで描かれるということです。
サイアノタイプのさらに詳しい情報は、日本語ではWikipediaの解説をはじめ、多くの方が試行錯誤されたものがあります。また日本国外では、日本よりたくさんの情報があります。書籍も。
当社ではサイアノタイプで使用する薬品セットを受注生産で販売いたします。 サイアノタイプの処方は先人達の試行錯誤の結果、書籍やインターネットでたくさん公開されています。 なので、当社独自の調合や特別な製法があるわけではありません。 ご自身で薬品を揃えられる場合は、キットを購入せずともサイアノタイプを楽しむことができます。
サイアノタイプでの写真を作る手順は簡単に列挙すると
こんな簡単なサイアノタイプですが実際に行ってみるためには越えないといけないハードルがあります。 薬品の入手とネガの作成です。 印画紙用の紙は水彩画の画用紙ですので画材屋で簡単に手に入るし、その他のものは100均のもので大体そろえられます。 サイアノタイプをやってみようかなと思いながらも諦めてしまうのはこのハードルのせいではないでしょうか。 そこでこの薬品とデジタルネガをご提供させていただきます。 価格は「みんなでサイアノタイプを楽しもう価格」に設定しました。 多くの人にハードルを越えてもらうためにこの価格でがんばります。
キット内容 | |
内容と量 | A液(100ml):フェリシアン化カリウム10g+精製水、B液(100ml):くえん酸鉄アンモニウム25g+精製水 |
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使用方法 | A液・B液を混ぜ(※1)支持体へ塗布します。混合後は感度は低いものの紫外線で感光されますので、暗い部屋で乾燥させてください。 |
消費期限 | 混合後はすぐに使い切ってください。容器は半透明のプラ容器です。光を通してしまうので、光を通さない箱に入れるなど暗所で保管してください。 |
塗布枚数目安 | はがきサイズで200枚 |
付属品 | シリンジ(注射器) |
販売価格 | 3,000円+税 |
サイアノタイプで使用する薬品は安全に扱うことができます。 特にくえん酸鉄(III)アンモニウムにつきましては食品添加物として利用されています。 しかし、家庭用洗剤などと同様に、誤って使用した場合にはリスクがあります。薬品による事故も考えられます。
購入前には必ずMSDS(化学物質安全性データシート,Material Safety Data Sheet)を読んで理解してください。 ただし、商品中の薬品は水溶液になっていますのでパウダーを吸引するようなことはありません。フェリシアン化カリウムにつきましては、毒物・劇物にも指定されていませんが、「硫酸により猛毒のシアン化水素を発生する」とあります。 硫酸と混ざってしまう環境にある人は使わないほうがいいかもしれません。
他社様の情報で申し訳ないのですが、薬品のMSDSです。購入される場合は購入前に必ず目を通してください。
EPSON の PX-5V を使用して製版用シートに印刷します。シートはフォーレックスとピクトリコのものをお選び(※2)いただけます。
デジタルネガ | ||
用紙 | リプロジェットHD (フォーレックス) | TPS-100 (ピクトリコ) |
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販売価格 | A4 未定 A3+ 未定 | A4 未定 A3+ 未定 |
1. ネガを用意する
これがないと始まりません。デジタルネガやネガフィルム、ガラス湿板・乾板ネガ、日光写真の種紙などのネガを用意します。デジタルネガはオルタナティブ・プロセス用や製版用のインクジェットフィルムに印刷します。OHPシートで作成される方もいます。もちろん一般的な白黒ネガフィルムも使えます。
2. 印画紙を作る
ここからの作業は薬品を使いますので、白衣やゴム手袋を着用してください。感光液は布に着いても洗い流せますが、感光してしいますと染み付きます。逆に言えば、サイアノタイプは紙だけでなくファブリックなどさまざまな支持体でも作ることができます。
フェリシアン化カリウム液(A液)とくえん酸鉄アンモニウム液(B液)を混ぜて感光液を作ります。混合液は紫外線で感光してしまうので紫外線の無いところで作業します。作業するのに明かりが足りない場合はタングステン電球などの明かりを使ってください。
混合液を刷毛や筆などで画用紙などの紙自体に塗布します。この塗布の仕方でも個性が出せます。緻密に塗ってもよし、荒々しく塗ってもよしです。塗り終わったら暗所で乾燥させます。乾燥すれば感光紙のできあがりです。
3. 露光の準備
ネガと感光紙を密着させます。そのために透明な板ガラスと板などで強く挟みます。感光紙が多かれ少なかれ波打つはずなので裏に何か挟むとよく密着します。写真をシャープに仕上げるにはしっかり密着させるのがこつです。透明ガラスの代わりにアクリル板は使わないほうがいいです。アクリルは紫外線を減らします。同様にUVフィルター付の板ガラスも使わないほうがいいです。高級な額縁で使われているガラスにはそういうものがあります。
4. 露光
紫外線で露光します。露光機や日光でできます。それぞれ紫外線の強さが違うのでテストして露光時間を決めます。日光の場合も天気の具合で紫外線量が変わるので、毎日時間は一定しません。テスト用のネガを作ってもよいし、勘でやってもよしです。
5. 現像
水で現像します。流水が無難ですが、ため水でもできます。絵の面を下にすると余計な薬品がとれやすいです。黄色い薬品がきれいに落ちたらできあがりです。ため水の場合はすすぎ洗いをします。ここですごく薄めたオキシドールに漬けるとコントラストがぐっと上がります。オキシドール原液をかけるとジュワっと絵から泡が出ます。色が変わったら再度水ですすぎます。この後、乾燥させるとできあがりです。
下記のような海外のサイトに詳しい説明がたくさんあります。いろいろなサイトを参考にして自分のスタイルを作ってください。
サイアノタイプは元のネガよりコントラストが高くなるし、ラチチュード(ダイナミックレンジ)が狭いのですぐに潰れたり飛んだりします。 なのでネガ作成時にあらかじめコントラストを低く作っておくのです。それでもサイアノタイプのレンジを越える部分は捨てましょう。 そもそもネガフィルムよりもモニターの方がレンジが狭く、紙は更に狭いです。実は同時プリントの時代から紙のレンジを越えた部分は見ることはできませんでした。フィルムには写っていたのに。
もちろん、トーンカーブの調整などせずにその特性を利用してもよしです。
トーンカーブの調整につきましてはA Non-Silver Manual: Desktop negativesやCurving Cyanotypeなどを参考にすればだいたいの特徴が掴められます。
厳密にやるのであればChartThrobのようにグレースケールのチャートを作成して実際に感光させて、そこから逆算してトーンカーブを作ります。が、そもそも均一で正確な印画紙を作れるわけではないし、サイアノタイプ自体も正確さを求められる写真技術ではないです。また太陽光が光源の場合、正確な露光時間も約束できません。
そこで注意しないといけないのが額の材質。100均にあるかは知りませんが、透明部分がアクリルのものは紫外線をあまり通さないかもしれません。googleなどで調べると「UVカット率がガラスで30%、アクリルで90%以上、UVカットアクリルで98%」だとか、それ以外にも似たような数字を載せているサイトを見かけます。また紫外線カットのガラスもあるそうです。と書いたものの100均のでしか試したことが無いので確証はありません。
もう一点。間違えることは無いと思いますが、透明部分がペラペラのPETの場合があります。こちらは密着には向きません。できあがった作品を飾るのに使いましょう。
水洗後、水張りしたものが半乾きになったら水で薄めたニスを薄く塗っていきます。縦、横、縦、横、と乾いたら塗り重ね、何度か塗ったら完成です。色も濃く、ウルウルした感じになりました。満足できる仕上がりです。もちろん好みによります。
コート剤を塗ることは印刷や絵画でも使う手法なのであながち間違いではないと思います。というよりはむしろ、表現方法なので明らかなデメリットが無い限り間違いでは無いので、これはこれで有りでしょう。
サイアノタイプはモニターなどで観るデジタルデータでは無いので、質感がとても大事です。画用紙によっても質感は変わってきます。いろいろ試してみたいものです。
サイアノタイプの特徴 | |
簡単 | 薬品が少ない、暗室が必要ない、特殊な器具を必要としない |
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安全 | 劇薬、毒薬を使わない |
安価 | 銀ではなく鉄の化学変化 |
化学を楽しめる | 作業はまさに化学の実験 |
アートを楽しめる | 作業はまさに作品の製作 |
広い応用範囲 | ネガの作り方から印画紙の作り方、調色、仕上げ、自由度満載 |